三浦木材株式会社|代表取締役 三浦 功達 氏|秋田県大館市
プロフィール) 秋田県大館市出身。大学卒業後、4年半の商社勤務を経て、家業である三浦木材㈱に入社。父の後を引き継ぎ代表取締役に就任。地方都市での経営の難しさと正面から向き合い、同業種、他業種問わず積極的にコラボ企画を展開し、新しい活路を模索する行動力ある経営者。今年7月オープンした
「ZEH住宅展示場/大館暮らすメイト」も、自身の発案で地元工務店5社が連携した共同事業で話題となる。
座右の銘/「気は長く、心は丸く、腹立てず、人は大きく、己は小さく」
趣味/早朝野球(大学まで硬式野球部に所属)
好きなTVドラマ/「トップセールス(NHK)」
■ 「先代社長・父との約束。住宅の設計・施工の売り上げを50%にする。」
Q)三浦木材㈱の業務内容と特徴について教えてください。
弊社は、木材住宅の設計・施工と建材販売を行っています。私で3代目になり創業65年になるのですが、元々は㈱三浦という建具メーカーとして始まった会社ですが、現在は全体売り上げの約50%が木材住宅の設計・施工で残り50%が建材販売となっています。特徴としては、2つの事業の柱があるので豊富な知識と情報により提案力には自信を持っていることです。
Q)この仕事に就いたきっかけを教えてください。
大学卒業後商社に入ったのですが、それまでは家業であるこの仕事を継ぐ気は全くありませんでした。入った商社が住宅関連だったこともあり、そこでこの仕事の面白さを知ったというのが大きかったですね。先代社長の父が体調を崩したこともあり、27歳の時に三浦木材㈱に入社しました。当時は、まだ住宅の設計・施工の売り上げが約20%で残り約80%が建材販売でした。その時、先代社長とこれからの経営について色々話をした際に、住宅の設計・施工の売り上げを約50%にあげるように力を入れて欲しいと言われ約束しました。
Q)先代はどうして住宅の設計・施工に力を入れようと考えていたのですか。
一番は、やはり建材販売の将来性に不安を感じていたからだと思います。秋田県にある取引先工務店は後継者問題で店じまいするところが増え始めていたんです。この傾向は、今後益々増えていくであろうと予測していました。それならば、自社で積極的に住宅の設計・施工に力を入れ需要を伸ばすことが建材販売にとっても良い循環を生むはずだと。現に10年経った今では、経営者の高齢化で年1棟施工するかしないかという工務店がとても多くなってきて、そうした工務店からOB顧客を紹介されて引き継ぐケースも増えてきています。
【三浦木材㈱/秋田県大館市】
■ 「限られた狭いエリアだからこそ、様々なコラボが可能になる」
Q)秋田県大館地区でのビジネスの難しい点は?
そうですね。やはり、いい意味でも悪い意味でも、人口7.3万人のとても狭い街なので限られたネットワークになるところです。これをどう考えるかが、とても重要だと思っています。限られた狭いネットワークだからこそ、実はそれぞれのお客様を持っている。それを奪い合うか、活かし合うかによってビジネス展望が大きく変わってくると思うんです。
Q)具体的には、どういうことですか?
実は、弊社はリフォーム部門にも力を入れているのですが、実はその営業ルートは街の小さな電気屋さんなんです。ある時、家電販売店組合の方と話しをする機会があって色々聞いてみて気づいたんです。僕らにとっての潜在顧客となる高齢者の方々と、すでに深い人間関係を築いてることに。そこで、3年前からタッグを組んで、リフォームの営業窓口をお願いしたところ、今では年間1000万円を超える売り上げにまで成長しました。こうしたお互いを活かし合うコラボは、この規模の狭さだからこそ可能なんだと思います。現在も新しく老舗の陶磁器屋さんとコラボして、料理教室を企画しています。
弊社はシステムキッチンを無償で提供しショールームとして機能させ、実際の集客・運営と併せキッチンリフォームの販売窓口も陶磁器屋さんにお願いすることになっています。こちらの取り組みも、上手くお互いが喜ぶ形になればと期待でしています。
【施工実績/「職人のこだわりがつまった平屋のお家」】
【施工実績/「地域材をふんだんに使用した長期優良住宅」】
■ 新しい挑戦!地元工務店5社で「ZEH住宅展示場」オープン
Q)同業工務店と連携する「大館暮らすメイト」にも積極的に取り組まれていますが。
はい。この「大館暮らすメイト」は、地元の工務店が集まって一緒に力を合わせて共存共栄を考えるいわば、同業種とのコラボ企画です。小さなパイでお客様の取り合いをするよりも、力を併せることによって大手ハウスメーカーとも互角に渡り合えるようにしていくべきだと考えました。特に宣伝・PRについては、工務店は本当下手だと思うんです。未だにホームページすらない工務店もたくさんありますよね。そのあたりを、1社では取り組めないことを、何社か集まってヒト・カネ・情報を持ち寄ることによって「宣伝・PR=集客する力」をつけていきたいと考えたんです。
【公式ホームページ/地元工務店5社からなる「大館暮らすメイト」】
Q)7月オープンの「ZEH住宅展示場」は、その取り組みの一つですね
はい。PR・集客を考えた時に、大手ハウスメーカーとの比較で一番差を感じていたのが常設のモデルハウスでした。そこで、地元の5社が集まって今後普及していくであろうZEHをテーマにしたモデルハウスを設計・施工することにしたんです。同じ敷地に、5棟が集まることでインパクトと利便性をともに上げることができ相乗効果があると思ったんです。今回は、7月から来年3月末までの期間限定ですが成功したら、第2弾、第3弾と規模も少しずつ大きくして続けていきたいと考えています。
Q)実際に来たお客様へのアプローチでもめたりしないですか?
全体として、きちんとルール作りをしました。5軒回って頂いてから1枚アンケートを記入してもらい、一番気に入った物件欄に記入された工務店が、お客様への交渉権を持つことにしました。実は、今回参加している工務店は、4年前に結成した「2世の会」のメンバーなんです。親の会社を事業承継し同じ悩みを持った仲間で、日ごろから勉強会や情報交換し交流を深めてきました。そうした信頼があればこそ、今回のようなコラボ企画が成立したんだと思います。
【7月オープン「ZEH住宅展示場/大館暮らすメイト」施工中現場(6月撮影)】
■ いい家とは、「永く快適に暮らせる家」。どこまで、先回りして考えるかが重要。
Q)最後に、三浦社長の考える“いい家”とは
そうですね。長い間快適に住める家かどうかが重要だと思っています。普通の人は、家を建てるのは人生で1回ですよね。最近、介護リフォームの案件をやってわかったのですが、高齢者用に手すりをつけようとしたのですが、下地がないので出来なかったんです。若い頃に建てた家も、20年~30年経てば家族構成、健康状態など全て変わってきます。その際に、小規模なリフォームで快適さを手に出来るようにするには、実は新築を造る際にどこまで先回りして考えるが重要だと思っています。そうした意味でも、永く快適に住める“いい家”を考えていきたいと思っています。
取材後記)
秋田県大館市にある事務所にお邪魔し取材させて頂きました。にこやかな表情で、インタビューに答えて頂いた三浦社長。「狭いエリアでは、自分だけのことでなく共存共栄を考えることがとても重要。
それが、最終的には地域の為にもきっとなるはず」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。具体的な提案力を持つことで、人と人を繋げ新しい可能性を示す。東北秋田にアイデアと行動力を兼ね備えた匠がいました。
三浦木材 ㈱
〒017-0031 秋田県大館市上代野字上代野5-1
TEL)0186-48-5811
E-Mail)info@miuramokuzai.co.jp
公式ホームページ → http://miuramokuzai.com