【古民家カフェ<TENEMENT>/築100年の日本長屋を改装したカフェ(東京都渋谷区恵比寿)】

今世の中で話題になっている事象にスポットを当てみなさんにわかりやすくお伝えする「おとわさんのトレンド解説。はなしのタネ。」第9回目のテーマは、日本のミュージシャンである猪野秀史氏がオーナーである古民家カフェ<TENEMENT>のお話。リノベーションネタが好きな皆様!!お待たせいたしました!!古民家カフェ<TENEMENT>は、築100年の日本長屋の仕様を活かしたゆったりした店内で、オーナーの地元宮崎県からの新鮮な食材を中心に“身体に優しい洋食”をモットーに、全て手作りで洋風料理やケーキ等を提供しています。店内は、古民家の仕様が活かされたモダンな雰囲気で、木のぬくもりを感じながら食事ができることもあり、女性からの人気が高く食べログ評価も高い古民家カフェです。そこで、どのように来店者数を伸ばしているかを調べるべく、古民家カフェ<TENEMENT>に実態調査へ行ってきました。


【左)本日のおすすめメニュー/右)古民家カフェ<TENEMENT> 入口】


【古民家カフェ<TENEMENT> 店内】

■ 今流行の<古民家リノベーション>って何??

古民家リノベーションとは、古民家の良さを活かしながら、新築時以上に性能やデザインを良くしたり、古民家に「新たな付加価値」をプラスする手法です。人口減少や長寿命化による介護施設の利用が増える中、古民家をリノベーションしてカフェやゲストハウスに再生している地域が増えています。敢えて、歴史を刻んだ柱や梁をインテリアとして活用するなど、古民家ならではの昔ながらの味わいを活かしたカフェなどが、消費者、特に女性から人気を博しています。古民家リノベーションを行うメリットは、主に3つです。
1つ目は、古民家にしかない味のあるデザイン性を活かせます。永年使われてきた柱や梁、ふすまや擦りガラスをインテリアとして取り入れることで、日本の伝統的な木造建築が持つ温かさや懐かしさを表現でき、レトロでノスタルジックな建物になります。2つ目は、
有害な物質が発生しにくいことです。古民家は構造上、完全に密封されていない為、結露が発生しにくく、新たに建材を利用するよりも、シックハウス症候群やアレルギーなどになりにくいらしく、意外と健康的に暮らすことが可能なんです。3つ目は、固定資産税を低く抑えられことです。固定資産税は築後年数により税額が決定するため、新築に立て直すよりも税金を軽減できます。日本においては、古い物件の価値は極めて低額なため、物件購入額も安く、税金面もかなりお得です。


【左:入口付近には、こだわりの7種のチーズケーキ/右:古民家の雰囲気を残した飲食スペース】

一方で、デメリットも3つありました。1つ目は、気密性や断熱性が悪いところです。
古民家は、風を建物全体に巡らせる構造になっていることが多く、夏は快適に過ごすことができます。しかし、気密性や断熱性が悪く、暖かい空気は上部へ逃げ出してしまい、冬の寒さを一層感じる構造になっています。まずは、スケルトンにして、高気密・高断熱性にすることは必須ですね。2つ目は、耐震性が悪いところです。古民家は、耐震基準が制定される以前に建てられた建物が多く、熊本地震など地震が多い日本では倒壊の恐れがあります。本来、古民家は、地震時に柱や梁の接合部や壁を変形させたりして、建物全体にかかる地震の揺れを吸収するという構造で造られているのですが、経年劣化で柱や梁自体がもろくなっている場合は、変形どころか即、倒壊することも。本当に怖いですよね。3つ目は、新築並みに費用が掛かるところです。材料費が予想以上に掛かります。古民家の柱や梁を綺麗に加工したり、統一感のある塗装を行うなどに費用が掛かるそうです。もちろん、廃材費用も掛かります。

■ 消費者が<古民家カフェ>を好む理由は?

古民家カフェは使い古された建物がどことなく可愛く、ノスタルジックな雰囲気を醸し出していることから、女性からの人気が高いです。また、古民家カフェの経営者も自然食や無添加の食品を利用し、手作りを売りにしている場合が多いのも健康志向の消費者に人気です。しかし、人気が出ている根本的な理由としては、現代人が昭和から平成にかけて生活が全て便利かつ、効率的な生活空間になったからこそ、息苦しくなることが増え、疲れた体や心を癒したいと感じているからではないかと思います。古い家ならではの木の温もりや、縁側などの雰囲気は、子供の頃を思い出させるものです。のんびりとした時間が流れる古民家での食事やティータイムは、常に追い立てられるような生活を送る現代人にとって癒しの時間となります。
今回取材に伺った古民家カフェ<TENEMENT>は、自然派ワインと洋食ビストロを提供するカフェであり、築100年の日本長屋を改築した店内はゆっくりとした落ち着く空間でした。永年使われてきた柱や端材を活用した内外装となっており、『日常の憩いの場、生活の一部』という思いが込められているそうです。また、化粧室内までも柱を活用したデザインになっていたのは驚きでした。メニューはオーナーの地元である宮崎県からの新鮮な食材を中心に旬な野菜やフルーツを使用し、体に優しい洋食をモットーに全て手作りで提供しているとのことです。さらに、全7種類からなるベイクドチーズケーキや、福岡県のロースターから仕入れるこだわりのコーヒーもおいしかったです。おひとり様でも入りやすい外観や内観でしたし、のんびりとした時間が流れる夕食でした。この店舗内の雰囲気と健康を意識した食事が来店数を伸ばしている秘訣だと思います。


【左:永年活用した端材をインテリアに/右:天井はそのままに】


【左:手作りビーフシチューオムハヤシセット/右:化粧室内の洗面台に柱が!?】

■ 「工務店」は古民家カフェ内に工務店事務所を設けるべし!!

今や、TSUTAYAがスターバックスと手を組んで、コーヒーを飲みながら本を読める店舗を増やしています。理由の一つとしては、両社とも店舗への来店数を増やす為です。そこで、工務店も自社施工した古民家カフェ内に工務店事務所を設けてはいかがでしょうか。工務店の技術力を消費者へ紹介する機会にもなりますし、古民家カフェ効果により事務所への来店数を増やしやすい環境となるからです。工務店が古民家カフェを運営するわけではなく、古民家カフェを行いたい事業者と出資し合い、建設していくのもありかと思います。古民家カフェの開業相場は、リノベーション費用も含め約500万円~700万円ほどで開業可能ですので、モデルハウスを建設し、モデルハウス内に工務店事務所を設けるよりも大分安いです。リノベーションを主力事業と考える工務店であれば、古民家カフェ内に事務所を設けることが競合他社との差別化にも繋がるかと思います。


【TSUTAYA TOKYO ROPPONGI店(東京都港区六本木)】

Written by おとわさん
「常に社会情勢にアンテナをはる事務局きっての情報通。」 音羽 翔  ジャパン建材㈱営業推進部推進課 宮城県仙台市出身 AB型 小さい頃の夢/理科の教師 趣味/バスケットボール(学生時...